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2013/12/25 (Wed) TWINS(おまけ)

おまけ話。
上の2人のお話です。





ブルル、と机の上の携帯が振動する。
すぐに気付いたものの、ミハエルはそれを無視して再び腕に力をこめる。
なにしろ半月ぶりの逢瀬なのだ。
人気芸能人同士、人目を忍ぶ熱愛は、燃える一方でなかなかのストレスでもある。
逢えなかった間の空白をすぐにも埋めようと、ミハエルの手が怪しげな動きを見せ始めると、中の温もりが抗うように身じろいだ。

「・・・おいミハエル、電話」
「メールだろ。いいよ、後で」
「馬鹿、仕事の話だったらどうするんだ。出ろよ」
「ったく、真面目だなぁ、姫は・・・」

いさめられて、ミハエルはしぶしぶ細い体を離す。
滅多に逢えない恋人と、一分一秒も離れたくないと思うのは自分だけなのだろうか。
いつまで経っても自分ばかりが好きなようだと思ってしまうのは、なんだか少し面白くない。
しかしその一方で、こうしてまるで子供のように諭されるのも悪い気がするものでもないのだ。
人より早く大人にならなくてはならなかった少年にとっては、それはまるで甘やかされていることに似ている。

(こういうの、尻に敷かれてるって言うのかもな)

以前の自分を知る者が見れば、きっと目を剥いて驚くことだろう。
誰のものにもならないミハエル・ブランは、誰にも支配されないミハエル・ブランだったのだ。
それがいまや、嬉々として想い人の言うがままだとは・・・実際、一番近くでミハエルを知る実の弟などには、大笑いされたものだ。

(まあ、あいつにだけは笑われる筋合いはないけど)

そんなことを思っていたせいだろうか。
ようやく携帯に手を伸ばしたミハエルが画面を見るなり、目に入ったのは、他ならぬ弟の名前。
そして淡々と綴られるメールの文章を目で追ううちに、ミハエルは思わず「うわあ」と情けない声を漏らす。

「うわー・・・うわあ、またか。どこまで信用ねえんだ、俺は」
「なんだ、ミハエル。まさか、また?」
「ああ、『また』だ。お姫様の弟君は、またしても俺のゴシップにご立腹らしい」
「へえ。耳が早いな、アルトも。やっぱり家を出るとそれなりに世間ずれするものだな」

そう言ってクスクスと笑うのは、早乙女有人。
フロンティア内外にその名を響かせる歌舞伎俳優にして、性差を超えた美貌の主だ。
誰も好きにならない、深入りしない、広く浅く楽しいだけの恋愛ゲームのプレイヤーを自認していたミハエルの世界を変えた、この世にただ一人の姫君である。
モデル出身、最近では徐々に映画やドラマなど俳優としての仕事もこなすようになってきたミハエルと伝統芸能の住人である有人とがいったいどこで知り合ったのかは、長くなるので割愛する。
ともかく、ミハエルは一目見るなり有人に夢中になった。
そして何故だか不思議なことに、ミハエルの徹底した推しの一手に、有人姫が落ちてくれたのだ。
(本人いわく、「ほだされた」ということらしいが)
まったく奇跡以外の何ものでもないと、自信家のミハエルがそう思ってしまうくらいに、それは誰もが予想しえなかったくらいのことだった。
こうして自宅マンションの一室に有人が居てくれること自体が夢なのではないかと、ミハエルは未だに疑ってしまうくらいだ。
ここに漕ぎ着けるまでに、いったいどれほどの反対と妨害があったことか・・・それは主に、有人の双子の弟と兄弟子による・・・涙なくしては語れないほどのものなのだが、それもまた長くなるので割愛する。
結果として、今現在ミハエルのマンションには有人が居るのだ。
穏やかな微笑み、いつだってミハエルを魅了してやまないその美貌を楽しそうに和らげて・・・しかし彼を微笑ませているのは、この場合、ミハエルではない。
非常に残念無念極まりないことなのだが、ミハエルは今はまだ、有人内ランキングにおいて、アルトより上に行くことは許されていないらしいので。

「『女性問題のゴシップ記事に、アルト姫が怒り心頭だ。ちなみに怒りの矛先は何故か俺に向かっている。どう責任をとってくれるつもりだ』・・・か。面白いな、お前のところの弟は」
「ああ、兄思いで泣けてくるね。俺のフォローをするよりなにより、アルト姫の機嫌が一番大事なんだ。嫌になるぜ」
「ふん、当然だろう。アルトにはそういう不思議な魅力があるんだから」

そう。
アルトがアルトなら、有人も有人だ。
早乙女の双子はそろいもそろって筋金入りのブラコンなのだとは、ミハエルは、すっかり恋に落ちてから知ったことだったが・・・時として、そのブラコンぶりはミハエルの想像を軽く超えてくる。
全く同じ顔をしているくせに、背だってちっとも変わらないくせに、有人にとってアルトは誰より可愛い『弟』らしく。


「ところで、ミハエル。お前の弟はまだアルトと一緒にいるんだな」


一気に冷えたその声に、ミハエルはぞくりと鳥肌が立った。
見れば、アルトは微笑みながらすごんでいる。
にっこりと唇は和らいでいるくせに、その琥珀の瞳だけはちっとも笑っていないのだ。
正直、怖い。
すごんだ美人は、ものすごい迫力だ。

「・・・まあ、アルトは放っておけないタイプだからな。構いたくなるのは困る。世間知らずな分、アルトも助かっているんだろうし」
「あ、ああ。ミシェルは器用なタイプだからな、きっとアルト姫をかまいたくて仕方ないんだろう」
「・・・かもしれないな。いい友人でいてくれれば俺も嬉しい。あくまでも、『いい友人』で、だ。分かってるな、ミハエル?アルトはまだ子供なんだ」

子供、ったって。
俺たちと同い年だろうが、というもっともな反論をする勇気は、ミハエルにはない。
なにしろ、100年に一人の逸材と言われた希代の歌舞伎役者が全力ですごんでいるのだ。
部屋の温度が一気に2度か3度は下がったような錯覚に襲われながら、ミハエルはその場に踏みとどまるのが精一杯で。


「・・・ミシェルによく言っておけ。アルトに手を出したら俺が許さない。俺と、矢三郎兄さんがな」


ああ。
有人一人だって並みのブラコン兄の比ではない厄介さなのに、矢三郎の名前まで出てきてしまった。
知っている。
早乙女一門の長年の内弟子である矢三郎は、これまた激しい(義理とはいえ)ブラコンなのだ。
有人とくっ付く時のミハエルへの妨害もひどいものだったが、これがアルトとなると・・・矢三郎もまた、アルトを必要以上に子供扱いしているところがあるもので・・・もはや想像もしたくない。
ミハエルに出来ることは、ただ深々とため息をついて祈ることくらいなもので。

(頑張れ、ミシェル。俺だけはお前を応援するぜ。・・・手伝うことは、出来ないかもしれないが)

なんだかんだ言ったところで、兄弟とは可愛いものだ。
しかし、誰より何より可愛いのは目の前のお姫様に他ならない。
下手にミシェルを庇い立てして、有人姫の機嫌を損ねることだけはミハエルには避けたいものなのであるからして。

「了解、了解。ミシェルの奴にはよく言っておくさ。だからさ、姫、そろそろ・・・」

面倒な話題は棚に上げるに限るのだ。
まだ文句を言いたげな唇には唇で封をして、ミハエルは再び愛しのお姫様を抱きしめるのだった。

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