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2013/12/24 (Tue) TWINS

イブです!
メリクリです!

が、それとは全く関係なく、前から妄想していたパラレル設定です。
ある意味定番っちゃ定番じゃないかと思うのですが・・・
一回やってみたかったんですよー





「・・・許せん」

ぽつりと呟かれたその一言に、ミシェルは気まずそうに目を反らす。
すっかり冬の日の貴重な小春日和、窓際の席はぽかぽかと心地よい温もりを与えてくれるはずなのに、ミシェルは何故だか身も凍るような思いだ。
昼休み、ミシェルは女子生徒からの差し入れの弁当(複数)を食べ終えて、今はしばしの休憩中。
目の前には愛しい愛しいお姫様(と呼んだ瞬間に、そのたおやかな手は怒りの鉄拳と化すのだということはもちろん重々承知の上だが)が居てくれて、本来であれば、学校で過ごす時間のうち、最も心安らぐ昼休み中だというのに。

「許せねえ。おいミシェル、なんだ、これは」

『美星のお姫様』の二つ名を持つ航宙科の万年二位こと早乙女アルトは、その涼やかな眦をきりりとつり上げて再び呟いた。
美人が怒るとすごい迫力だ。
その怒りのオーラをひしひしと感じつつ、ミシェルはぎこちない微笑みを浮かべた。
面の皮の厚さには自信があったはずなのだが、ことこのお姫様に関しては何もかもが例外だ。
早くも試合放棄の気分に襲われながら、それでもミシェルはどうにか朗らかな声を振り絞ってみせたのだったが。

「な、何がだ、姫?何がそんなに、気に入らな・・・」
「これだ、これ!今さらしらばっくれるな、馬鹿!あと姫って呼ぶな!」

捲し立てるように声を上げて、アルトはずいと手にしていた携帯電話をミシェルの目の前に突きつけた。
そこに写し出されていたもの、ある意味では予想通りの代物に、ミシェルは思わず口ごもる。
言葉を探しあぐねているのか、ぱちぱちと瞬くだけのミシェルのその態度に、アルトはますますヒートアップだ。

「お前、これで何度目だ!?節操がないにも程がある!」
「ご・・・誤解だ、姫。そんな記事を真に受けるなよ」
「火のない所に煙は立たず、ってな。隙があるから狙われるんだろ?ゴシップ誌のカメラマンてのは優秀だよな?」
「ままままあまあ、そんな怒った顔するなよ。美人が台無しだぜ、な?」
「茶化すな、ミシェル!本当にお前らときたら、こんな・・・こんなっ・・・!」

更なる罵詈雑言に開きかけたアルトの口元を、ミシェルはその大きな手で慌てて塞いで誤魔化した。
もがもご!とアルトがそのたおやかな風情に似合わず派手にもがくのは、すでにこの教室では見慣れた光景だ。
『ほんとに仲がいいんだから』と生暖かく見守る女子生徒の姿、『ミシェルの野郎、いつも羨ましい真似しやがって』と憎憎しげに睨む男子生徒の姿がそこここで見られるものの、二人の絡む様子に特別注目しているような生徒達の眼差しはない。
そのことにホッと胸をなでおろし、ミシェルはそろそろとアルトの口から手を離す。
呼吸困難になりかけていたアルトはキッとミシェルを睨みつけるが、美星の伊達男は至ってクールな顔だ。

「騒ぐなよ、アルト姫。まさか好き好んでゴシップ誌にネタを提供するつもりじゃないんだろう」
「う・・・っ、るさい!そもそもお前らが、」
「ストップ!『お前ら』って一くくりにするのは止めてくれって、前から言ってるだろう。俺は俺、あいつはあいつなんだから。そんなの、姫が一番よく分かってるはずだろ」
「・・・そんなの、分かってる・・・分かってはいるが、でも・・・!」

ギリリとミシェルを睨みつけて、しかし今度は限りなく小さく潜めた声で、アルトはこう囁いた。
ミシェルにしか聞こえない程度の、吐息のように呟く声で。




「これ以上有人を悲しませるようなマネしやがったら、俺はお前の兄貴を殺す」





押し殺したアルトの声音は、とても冗談や軽口と言えるようなものではない。
その一言に滲んだアルトの本音を悟らされ、ミシェルは「ははは」と乾いた笑いを漏らすことしか出来ない。
それはきっと、相手がミシェルでなくても似たようなリアクションしか出来ないだろう。
出来る者がいるとすれば、それはきっと、早乙女家に住み込みの内弟子であり、アルトの兄のような存在である早乙女矢三郎くらいのものだ。
それほどまでに、それは周知の事実なのだ。
誰を恐れるものはいないような、孤高のツンデレ姫・・・早乙女アルトが、とんでもないブラコンである、という事実は。


*****


早乙女一門には二人の御曹司がいた。
一人は有人、一人はアルト。
厳しく育てられた二人はみるみるうちにその才能を開花させ、その類稀な才能の主が二人も現れたという奇跡に、歌舞伎界はもちろん、フロンティア内外の芸能界が色めき立つほどだった。
時に競い合い、時に支えあう美貌の双子の存在により、歌舞伎界の将来は安泰と思われた。
それほどに、双子は才能に奢ることのない努力家であり、舞台への情熱の持ち主だと思われていたのだったが。

「俺、舞台を降りる。パイロットになりたいんだ」

双子の弟、アルトが突然にそう言い出した時は、フロンティア中が騒然となった。
しかし周囲の大人たちはただ『一時の気の迷いだろう』『じきに目を覚ますさ』と笑うばかりで、誰もアルトの言葉に耳を貸そうとしなかった。
彼らにとっては、アルトが有人とともに歌舞伎界を背負って立つことは揺るぎのない決定事項だったのだ。
ただ一人、有人だけがその例外だった。

「飛びたいのなら、飛べばいい。それがお前の舞台なのだろうから」

アルトの本気を信じたのも、味方になったのも、ただ一人、有人だけだった。
世界中の誰もが反対する中で、有人だけが真剣にアルトの話を聞いた。
有人だけが、アルトの味方だったのだ。
そしてその結びつきは、アルトが早乙女家を飛び出した後ももちろん続いているわけで・・・いや、いっそますます強固になってさえいた。


そしてその切欠となったのは、他ならぬ。


*****


「だいたい、俺は最初から反対だったんだ。芸能人なんて軟派で軟弱で軽薄な奴らばかりじゃないか、そんな奴とまともに付き合おうだなんて有人が辛い思いをするだけなのに、なのに、なのに、なんでよりによって・・・!」


・・・お前の兄貴なんかと、付き合うなんてことになったんだ!


そう。
双子なのは、アルトだけではない。
他ならぬミシェルもまた、双生児の兄を持つ双子なのだった。

ミシェル・ブランの兄、ミハエル・ブランは、弟とは違い、芸能界に籍を置いている。
兄弟で街を歩いていたところをモデル事務所にスカウトされ(ちなみに、ミシェルは「柄ではない」と断った)、あれよあれよという間に人気はうなぎのぼり。
あちこちの広告や雑誌に取り上げられ、今では若い女性からの支持は絶大。
ついたあだ名は、『銀河時代のセックス・シンボル』だ。
身も蓋もないその名の由来は、もちろん、いかにも女性受けしそうな甘い顔立ちだけではなく。


「・・・トップモデルと乱交パーティーだとか、人気女優と一夜の夜遊びだとか、某アイドルグループのメンバーに手を出して以来二度と共演できなくなったとか・・・その手のネタは腐るほどある男じゃないか。いったい、有人もあんなやつのどこがいいんだ」
「あいつの所業をフォローするつもりはないが、ゴシップの全部が全部鵜呑みにはしないでくれよ、姫。過去はどうあれ、今のミハエルは有人に首ったけだ。弟の俺の目から見ても気持ち悪いくらいに」
「当然だ。有人ほどいい男はいないからな」
「ああ、そうだ。今のミハエルはそんな有人姫以外眼中にないんだ。そして何の気まぐれか、有人姫もミハエルを相手にしてる。俺たち相手に臆面もなくのろけるくらいに、だ。それを忘れたわけじゃないんだろう、アルト?アルト姫だって、あの時は認めてたじゃないか」
「そ、それは・・・あの時はあの時だ!誰がお前の兄貴なんて認めてやるもんかっ、馬鹿!」


思い出す。
ミシェルとアルトを前にして、二人の双子の兄たちは堂々とこうのたまったのだ。


『というわけで、俺たち、付き合ってるから』


・・・その時のアルトの荒れっぷりったらなかったと、ミシェルは思い出してはため息をつくのだ。
アルトのブラコンは相当だ。
だからまあ、兄の恋愛に平常心でいられないことは仕方のないことだろうが・・・何故、その相手が自分の兄貴だったのだろう。
何故に自分がアルトから親の敵のような目で見られなくてはならないのか。


「有人をたぶらかしやがってっ、ミハエルの野郎!邪魔するぞ、ミシェル!協力しろ!」
「そんな、馬に蹴られるようなマネを・・・放っとけよ、アルト姫。やぶへびになるだけだって」
「なんだよっ、それじゃあお前は有人はミハエルの毒牙にかかるのを黙って見てろっていうのか!?」
「障害があればあるほど燃え上がるのが恋愛、ってね。アルトが邪魔すればするほどミハエルは燃えるだろうし、有人姫様もそうだろう。それとも泣くかな?弟思いの有人姫様は、アルト姫が自分たちの邪魔をすることを悲しむんじゃないのかなあ」
「・・・くっ・・・じゃあ、俺はどうしたら・・・!」


声にならずに吐き出して、アルトはがばりと机の上に突っ伏した。
不貞寝だ。
こうなったら、きっともう昼休み終了のチャイムがなるまで起きはしないだろう。
せっかくの休み時間、姫の麗しいお顔を眺められないのは残念なことだとミシェルは思う。
もっとも、天下の早乙女アルト姫くらいになれば、ツムジだって後頭部だって可愛らしいことには違いはない。
子供っぽい態度も悪態も、ミシェルのフィルターを通せばとびきりの媚態以外の何ものでもないのだ。
これが惚れた弱みってやつか、とミシェルはしみじみと思い知らされてしまう。

(あーあ。俺も重症だ)

苦笑しつつ、ミシェルは机の上に放置されたままの携帯電話の画面を眺める。
そこに映されたのは、他愛もない芸能ニュース記事。
何のひねりもないそのタイトルは、『人気モデル・ミハエル、謎の美女と深夜の密会!?』だ。
掲載の写真はぼやぼやにぼやけた薄暗い写真一枚きりで、証拠写真というにはとても信憑性がない。
そんな写真を見たところで、いったい何人がこんなゴシップを信じるだろう。
少なくともミシェルはそれをちらりと眺めたところで、これっぽっちも信じる気にはならなかった。
そしてそれは、有人も同じことだろう。
姿形はそっくりな早乙女の双子の兄弟は、しかし中身はまるで違う。
子供っぽさを残したまま成長したアルトに比べ、兄である有人姫はかなりの思慮深さだ。
恋人のゴシップの一つや二つ、鼻で笑っている姿が目に浮かぶ。
見た目のたおやかさ、はかない美しさを裏切る肝っ玉の持ち主。
それが早乙女有人という人間であることを、ミシェルはよく理解しているつもりだ。
ミシェルでさえ理解しているつもりのそんなことが、どうして弟であるアルトには伝わらないのか・・・ブラコンとはげに厄介な性質であると、ミシェルは嘆息せずにはいられない。

(でも、そんなところも可愛く見えちまうんだよなあ)

人は、それを恋がゆえの盲目とでも言うのだろう。
しかし困ったことに、その盲目が治る気配はない。
なにしろミシェルもまた、兄のミハエルと同じくらいに、この早乙女の双子の片割れに首ったけなのだから。

(さて、今日はどうやって機嫌をとるか。ケーキか、パフェか、それともまたゲーセンにでも連れてってやるか)

ミハエルと有人、ミシェルとアルト。
二組の双子の恋模様は、今のところ兄たちが一歩も二歩もリードしている。
だけど自分だちだってそう遠くない将来には兄たちをあっと言わせるような関係になるはずだと、ミシェルは強く信じていた。
それはきっと一月後か、二月後か・・・半年も一年も先のことだとは、思いたくはなかったけれども。

「ひーめ、そう拗ねるなって。今日授業が終わったら、最近出来たケーキ屋に行こうぜ。フロンティア初出店なんだってよ、興味あるだろ?」

甘やかす声音に、ミシェルは自分で笑ってしまう。
こんな風に誰かのご機嫌取りに励むなど、以前の自分からは考えられなかったことだ。
兄が見れば笑うだろう。
しかし、その兄だって同じことだ。
ミハエルもミシェルも、ブラン家の双子は揃って早乙女の双子に敵わない。
なんとも情けないその事実は、しかし不思議と悪い気がするものではないのだ。
伏せたまま動かない頭をミシェルが愛おしげに見つめていると、その小さな頭が、じわりと居心地悪げに身じろいだ。

「・・・行ってやらないこともない。有人にも何か買ってってやりたいし」
「さすが、兄想いのアルト姫。殊勝だな」
「うるさい、茶化すな。あと姫って言うな」

馬鹿ミシェル、と返ってくる言葉さえ甘く聞こえるのは何故だろう。
恋とはこんなにも人を愚かにするものなのか。
ならば自分の万年首席の座も危ういものだと、ミシェルは沸いた頭の片隅で思う。
しかしそんなことも、何もかも。


「お供するぜ、アルト姫。空の上でも、どこまでも」


このお姫様の前ではどうでもいいことなのだと、ミシェルは締まりのない笑顔を浮かべることしか出来ないのだった。


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