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2013/09/29 (Sun) カーディガン攻防

衣替えの季節ですね。っていうだけのお話です。

萌え袖は正義!

※今更ですが、フロンティアの季節感については考えないようにお願いします。




暑さ寒さも彼岸まで、とはよく言ったものだ。
日中はまだ真夏のように暑い日もあるが、このところの朝晩はもうかなり涼しい。
今日などは特に風のせいか、まだ夕方にも関わらず、急に気温が下がってきた。
このまま一気に秋になるのか、それともまだまだ残暑が続くのか。
10月の衣替えを前にいまだ半袖の制服姿のミハエルは、休み時間の教室で珍しくぼんやりとそんなことを考えていた。
美星学園では10月を境に前後一週間から10日程度の制服移行期間が設けられているため、今はちょうど夏服と冬服姿の生徒たちが入り混じっている状態だ。
そして優秀な遺伝子、頑丈すぎる体のせいか、ミハエルは暑さ寒さのどちらにも強い。
少々の気候の変化くらいびくともしない神経の持ち主なのだが、もちろん、世の中にはそうでない人もいるわけで。

「・・・っ、クシュッ!」

なかなかに可愛らしいクシャミに、ミハエルはふと顔を上げた。
控えめなクシャミの主は、通称『航宙科のお姫様』こと、早乙女アルトその人だ。
ミハエルと同じく半袖姿で、しかしミハエルとは違い、いかにも肌寒そうに身をすくめている。
小作りに整った繊細な容貌の印象を裏切らず、航宙科の姫君は寒さに弱い。
ただでさえ白い肌は秋風の下ではますます白く、半袖シャツからのぞく二の腕の細さが余計に彼の肉付きの薄さを知らしめるようだ。

(肉がないから寒いんだろう。筋トレはしてるはずなのに、どうしてちっとも太くならないんだ)

そんなことを思いながら、ミハエルは、ぶるりと震えるアルトの姿をじっと見つめる。

(寒いのに弱いのなら、上着くらい用意しておけばいいものを)

大事大事に育てられたせいか、彼はどうも用意が甘い。

(ほんと、箱入り姫様だからな)

本人が聞けば激怒しそうなことを胸の中で呟いて、ミハエルは静かに立ち上がりかけた。
が、その時。

「アールート!あんた、何寒そうなカッコしてんのよ!」

ざわつく教室の中でもよく通る美声の主は、言うまでもなく、銀河の妖精その人だ。
生まれて初めての学校にいまだにテンションが上がりまくりの妖精ことシェリル・ノームは、今日もわざわざ忙しいスケジュールの間をぬって登校したらしい。
今登校したところで受けられる授業などあと1つがせいぜいだろうに、物好きにもほどがある。
そんなミハエルの呆れ混じりの視線になど構うはずもなく、今日も今日とて元気いっぱいの妖精様は、つかつかとアルトの元に歩み寄った。
ちなみにもちろん、新しいもの好きのシェリルはすでに冬服姿である。
当然のように改造制服だったりするのだが、今更それを突っ込む生徒はもちろん教師も存在するはずがない。
銀河のファッションリーダーの名の通り、シェリルはさらにその上から厚手のカーディガンを羽織ってまでいたのだったが、アルトの前で立ち止まるなり、さっとそれを脱ぎ下ろした。
はい、と目の前に突き出されて、戸惑ったのはアルトである。

「?なんだよ、シェリル。暑いのか?」
「馬鹿ね、違うわよ。あんたが寒そうにしてるからでしょ」
「んだと?余計な世話だ、別に寒くなんか、」
「クシャミしてたくせに、何言ってんのよ。帰りにはもっと寒くなるわよ、風邪引きたいの?」
「・・・いや、でも・・・女物は・・・」
「こんなカーディガンくらい、女も男もないでしょ?飾りも何もついてないんだから。袖通さなくても、羽織ってるだけでもいいんだし」

シェリルの言葉通り、差し出されているのは男女兼用でも問題のないほどシンプルなカーディガンである。
華やかで鮮やかなものを好むシェリルらしくないデザインだったが、これはこれでシェリルなりの『女子生徒』像の演出なのかもしれない。
いかにもスクールガールらしい、学校指定のようにも見えるほどシンプルな一着は、美星学園のカラフルな制服の羽織ものとしては案外しっくりとして見える。
(きっと明日からは同じ格好の女子生徒が校内に激増することだろう。シェリル・ノームの影響力、侮るべからずだ)
シンプルな紺一色でシェリルの体には大きいほどだったそれは、アルトが着ればちょうどいいサイズだろうか。
それでも『女物』であることに躊躇している様子のアルトだったが、やがておずおずと手を伸ばした。

「夕方以降は一気に冷えるらしいわよ」

という一言がきいたのかもしれない。
それとも、元々相当に寒かったのか。
どちらにしろ、意地の塊のようなアルトがついにシェリルのカーディガンを受け取ろうとしたのだったが。


「ちょっと待った、お姫様」


言うなり、ミハエルはアルトの頭から黒いものを覆いかぶせた。
きょとんとするシェリルと、それから突然暗くなった視界に固まってしまったらしいアルトの二人を前に、ミハエルはにっこりと口角を持ち上げる。

「シェリルの上着なんて借りて、歌姫に風邪を引かせるつもりか?全銀河のシェリルファンを敵に回したいのなら止めないが、俺のでよければ貸してやる」

ミハエルのその言葉に、アルトはきょとんと瞬いた。
頭からはミハエルがかぶせたものがずり落ちて、自然な形でアルトの肩に引っかかっている。
それは、先ほどミハエルが鞄から取り出したカーディガンだ。
ミハエルの黒いカーディガンを手にとって、アルトは納得したように頷いた。

「・・・それもそうだな。悪かったな、シェリル」
「私は別に風邪を引くほど寒くはないけど。あんたはいいの、それで?」
「ああ、ミハエルのがあるしな。ミハエル、借りるぞ」

借りるぞと短く言って、アルトはさっさとミハエルのカーディガンに袖を通す。
やはり男物だと安心するのだろう、そこにシェリルのものを借りようとした時の躊躇はなかった。
暖かなそれに安心した様子のアルトを前に、シェリルはなんだか呆れた顔だ。
美しい形に揃えられた眉をひょいと上げ、ミハエルに向かって唇を尖らせる。

「ほんっと、あんたも案外分かりやすい男よね、ミシェル」
「何のことかな?俺は気のきく、ただの紳士な男ですよ、ミス・シェリル」
「そうやって誤魔化してるつもりでしょうけど、バレバレなのよ、全く。心狭いったら」
「言っている意味が分からないな。俺は何か、気に障ることをした?」
「やあね、無自覚?それともそれも演技なのかしら?まあ、どっちだって私は構わないけど」

やれやれと首を振るシェリルに、ミハエルは訝しく眉をひそめる。
隣では、アルトが同じように不可解そうな顔をしていた。
そんな男二人を前にますます呆れ顔のシェリルだったが、すぐに飽きてしまったのだろう、トイレから戻ってきたらしいランカに目を留めると、あっという間にそちらに駆け寄って行ってしまった。
ぽつねんと残されたのは、意味深な言葉に振り回されたミハエルとアルトの二人だけで。

「・・・シェリルの奴、何言ってたんだ?ミハエル、お前が何だって?」
「さあ?女王様の深遠なお言葉は、庶民には理解しがたいね」
「ふうん・・・あ、これ、帰るまで借りるぞ。いいか?」
「いいよ、別に。俺はこの程度じゃ全然寒くないし」

そこで、一瞬の間が生まれた。
アルトの切れ長の瞳に、再び大きな疑問符が浮かぶ。
なあ、と問いかける声は、あくまで無邪気で呑気なものだ。

「寒くないなら、お前、なんでこんな上着なんか持ってんだ?」
「・・・さあ?なんでだろうな」
「なんだよ、真面目に答えろよ。本当はお前も寒いんじゃないのか?」
「いや、それは本当に平気だ。なんつーか、あれだ、俺は用意がいいんだ、誰かさんと違って」
「んだよ、お前ほんとに嫌味な奴だな」
「・・・そんなこと言うなら、貸してやらない。脱げよ、姫」
「姫って言うな。いいだろ、今日一日は貸してくれって」

じゃれるように言葉を交わしている間、ミハエルはちらりとアルトを観察した。
自分の上着を着ているアルトを。
身長は大差がないはずなのに、体格の差か、ミハエルのものではやはりアルトにはいくらか大きすぎるらしい。
肩は落ちかけ、袖もせいぜい指の先端がのぞくくらいに長すぎる。
そんなアルトを見下ろして、ミハエルは何故だかひどく満足で。



自分には必要のない荷物を持ってきた甲斐があったなあ、などと思ってしまうのだった。



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