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2013/09/02 (Mon) 風、立ちぬ

『風立ちぬ』、皆様ご覧になられましたか?
賛否両論あるようですが、私はわりと好きでした。
ええ、特に本庄が!
(もちろん主人公の飛行機大好きっぷりに姫を重ねないこともなかったのですが、見てみたら案外そっちには変換できませんでした)
そして今回はタイトル通り、映画『風●ちぬ』に触発されたパロディです。
しかし、かつてないほどミハアルでなくなったかもしれません。
書いてる本人はミハアル妄想の延長線であれこれ遊んでいたのですが、出来てみたら、「あれこれミハアル・・・?」っていう・・・。
ぼんやりとした雰囲気だけで突っ走ってしまったので、どうぞ皆様脳内補完でミハアル変換して下さいませ。
自分で読み返してあまりにミハアルじゃなさすぎたので、後でおまけを追加したいと思います(笑)
でもいいんだ、書きたかったんだから・・・!
ではでは、どんな雰囲気短編でもどんとこい!の方は続きからどうぞ。

また、管理人、明後日から来週にかけて留守にしますため、明日明後日以降の自家通販につきましては週明けの処理となります。告知が遅くなり、大変申し訳ありません。 




「本当はパイロットになりたかったんだ。だけど、目が悪くてね」

そう言うと、少年は驚いたように顔を上げる。
まじまじと見つめてくる琥珀に小さく笑い、男がそっと眼鏡を示せば、少年もまたかすかに唇の端を持ち上げた。

「そうか。実は俺も、子供の頃はパイロットになりたかった」
「君が?そいつは意外だ」
「見えないって言うんだろう。皆そう言うんだ」

男の正直な感想に、少年はわざとらしく拗ねた顔をする。
そのあどけない横顔に思わず苦笑して、男はそれ以上の追求をしなかった。
子供の頃はパイロットになりたかったという、今もなお男の広げた飛行機の設計図に夢中になっているこの少年が、何故若くしてその夢を諦めてしまったのか。
時おり見かける彼の母とよく似た抜けるような肌の白さがそれを物語っているような気がして、迂闊にそれを問うことが出来なかったのだ。
彼と母はよく似ている。
その人目を惹く美貌だけでなく、きっと、その儚い体質さえも。

「パイロットでなくても、設計者でもすごいじゃないか。いいな、飛行機に携わる仕事なんて・・・外国にだって行ったんだろう?どうだった、向こうの飛行機は?」
「ああ、すごかった。言っちゃ何だが、レベルが違うな。工業としての国力の基礎、馬力が違いすぎる。なんたって、こっちは未だに飛行機の運搬が馬なんだぜ?」
「まさか、本当か?馬が飛行機を運ぶって?」

無邪気に笑う少年・・・子供ではないが、青年と呼ぶにはまだいくらか早い・・・と男が出会ったのは、この避暑地でのことだ。
新たな飛行機の設計に失敗した男は、傷心を慰めるため、一人この静かな避暑地を訪れていた。
誰とも話したくないと知る者のいない土地を選んだはずが、やはり人寂しかったのだろう、いつしか同宿の少年と言葉を交わすようになった。
時折見かける少年の母親はまだ若く美しく、十分に魅力的だったが、その薄い背には何故か影があった。
避暑地を訪れたのはその母の療養のためだという少年もまた言葉少なく、男はそこに含まれた意味を悟らずにはいられなかった。
肺の病は、この時代にはまだ重い。ほとんど不治と言ってもいいほどのそれだ。

「どう見ても問題のない設計に見えるけど、何がいけなかったんだろうな。空中分解したんだって?」
「言わないでくれよ、また落ち込んじまう。それを忘れるために俺はこんなとこまで来たってのに」
「ふん、そうかよ。そのわりには毎日設計図を持ち歩いてるじゃないか」
「・・・それは、どっかの我がままなお坊っちゃんが見せてくれって毎日毎日せがんでくるからさ」
「ふうん、まあ、そういうことにしておいてやるさ」

愉快そうに微笑んで、少年は再びテーブルの上の設計図に目を落とした。
熱心に見入るその様からは、彼が本当に飛行機を愛していることがよく分かる。
まるで昔の自分を眺めているような気がして、男は微笑まずにはいられない。
自身にもそんな時代があったことを、ただ無心に飛行機を好きでいたことを、男はもうずいぶん長い間忘れかけていた。
軍のお偉方から投げられる無茶な注文に答えることに必死になって、図面をひくことがただのノルマのようだった。
あれほど憧れ、熱望していた空と飛行機に関わる仕事についたというのに、気付けば空を眺めることさえ忘れかけていた。
身も心も疲れはてた男は、ここに来てこの少年と出会ったことで、ようやく己の上に広がる蒼天に気付くことができたのだ。


『何を見ているんだ?それ、飛行機の図面?』


ある日偶然に出会った少年は、あまりにも無邪気に軽やかだった。
ただ真っ直ぐに空を愛する、この透明な瞳の少年の存在が、男にはかけがえのないものに思われて仕方がなかった。
先の見えない暗い時代に生まれあわせたこの少年の明るさが、男にはひどく美しく、そして切なく思われた。
ただ自由でまっすぐなこの少年を、まるで己を叱咤するために天が使わした使者のようにさえ思うのだ。
もっともそんなことを言えば、彼はきっと顔を真っ赤にして照れながら怒ってしまうのだろうが。

「・・・新型機のアイデアも、なくはないんだ。悠長なことをしてたら、こっちの首も危ういし」

山の中の避暑地は静かなもので、伝え聞くばかりの戦争の影も何もない。
聞こえるのは鳥のさえずりと穏やかな風の音ばかりで、男はうっかりと忘れてしまいそうになる。
未練がましく持参した資料。
飛行機の設計図。
それは、人を殺すための道具だということを。

「問題は軽量化だ。削れるだけ削って、機体を軽くしてやらないと」

独り言のように呟いた男の言葉に、少年は大きく瞬いた。
興味津々の視線を手元の設計図に落とし、熱心に見入る。
再び顔を上げた時には、年相応の得意顔をして。

「それなら、こんな機関銃なんか取ってしまえばいいのに。そうしたら、一気に軽くなるだろう」

その言葉に、男は思わず吹き出した。

「ははっ、こいつは戦闘機だぞ?軍の飛行機から銃を外せって?」
「あ・・・そうか、そうだったな。すっかり忘れてた」
「こいつはいいや、最高だ。機関銃のない戦闘機か!」
「なんだよ、そんなに笑うことないだろう。性格悪いぞ、おい、笑いすぎだって!」

げらげらと腹を抱えて笑いながら、男はひどく爽快だった。
銃なんかと言い放った少年の物言いが、不思議なほどに胸に染みた。
バカにされたと思ったのか、白い頬を真ん丸に膨らませて不機嫌になってしまった少年に、男は未だに肩を震わせたまま、独り言のように呟いた。

「そうだな、空を飛ぶのに銃なんかいらないんだ・・・そんなことも、忘れていたよ」

そう言えば、少年はふっと琥珀色の目を和らげた。
穏やかに微笑むその瞳の奥には、確かに飛行機の姿が浮かんでいるのだろう。
かつて男も夢見たはずの美しいそれ。
その大きな翼には、武器も、打算も、汚い思惑も何もない。
そこにあるのは、ただ伸び伸びと空を駆け抜ける、鳥のような自由だけだ。

(戦うためでなく、ただ、飛ぶためだけに)

そう思った瞬間、一陣の風が吹き抜けた。
煽る風に金髪を乱し、しかし男は微笑んでいた。
静かに笑う少年の、その穏やかな瞳を覗き込むようにして。

「約束する。いつかきっと、銃のない飛行機を作ってみせる。ただ空を飛ぶためだけの飛行機を」

嬉しそうに頷く少年の微笑みを、男は目に焼き付けた。
それは陰りも曇りもない、突き抜ける青天に吹く風のような微笑みだった。


*****


後に、男は一機の飛行機を作り上げた。
長かった戦争の後に生まれたその飛行機は、メサイアと名付けられた。
新時代の救世主たれと産み出されたその機体は世紀の名機と謳われ、男の名を世界に知らしめるものとなったが、当の男自身は機体について多くを語ることはなかった。
残されたのは、ただ一言。
あれは『約束の証』なのだと呟いた男の言葉だけが、記録に残されている。

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