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2013/05/09 (Thu) 花盗人(16)

間があきましたが、続きです。
そろそろまるっとまとめたいところです。

ところで春アニメ、皆さん何をご覧ですか?
私はガルガンティアと巨人、それから魔王さまを楽しく見ています。
アニメはいいです、癒しです・・・




レオンの言葉、アルトに「自分のものになれ」と言った言葉は、どうやら本気だったらしい。
あの日の城での一件の後、飛ぶように屋敷に戻ったアルトの元には、正式な婚姻を申し出る書面が届けられた。
アルトがそれを持て余しているうちに、話はますます勝手に進んだ。
いくらの日も経たないうちに、ついにお城の奥方がレオンとアルトの婚姻を認めたという話が・・・もちろんアルトの意志など無視だ、尋ねられもしなかった・・・もたらされ、その噂はあっという間に早乙女の国中に広まった。
屋敷にほど近い里山の人々までもが「お屋敷の姫様が嫁がれるらしい」と噂をしていると聞いても、アルトにはどうすることも出来ない。

(きっと、奥方は楽しんでいるんだ)

初めは余所にやると言ったアルトをレオンと結婚させることにしたのは、その方がアルトが嫌がるとでも思ったのだろう。
それともより近くでアルトの屈辱を見物するつもりでもいるのか、あるいはかつて美与にしたように、アルトを城に住まわせて直接的な嫌がらせでもする気なのかもしれない。
何にせよ、悪趣味極まりない話だ。

「三島殿とアルトさんが結婚するのなら早乙女の血が保たれる、嵐蔵様もお喜びだと言われては、城の者は従うしかありません。実際には美与様を慕う者も大勢おりましたし、アルトさんに同情する者も少なくはないのですが」
「表立って奥方に刃向かう馬鹿はいない、か。仕方がない、奥方の後ろには隣国がいる」

隣国の力は強大だ。
国の大きさも兵力も、早乙女とは比べものにならない。
あの奥方、隣国の主の娘である彼女を起こらせたら早乙女などきっとあっという間だと、この国の者なら誰もが分かっている。
このところ一気に春めいてきた庭を眺め、アルトは憂いた息を吐く。
嵐蔵と美与とが連れ立つように亡くなった今、アルトを取り巻く環境はまるで変わった。
その立ち場も、行く末も、暮らしぶりさえ変わってしまった。
だがそれでも、変わらないものもある。
屋敷の庭、春の花々が競うように咲き出したこの庭の美しさは、美与が生きていたころと何も変わらない。
そして、アルトが頼るべき者も。

「・・・心配はいらない。いざとなれば、差し違えても俺が三島を始末する」
「ミシェル!お前、今までどこに!?」

ふいに現れた金髪の影に、アルトはぱっと振り向いた。
いつの間に屋敷に上がってきたのか、部屋の入り口に控えた姿は、少しばかり痩せたように見える。
そんな姿を見てしまえば責める気にもなれず、アルトは無言でミハエルに向かって両手を広げた。
何も言わずとも近づいてきたミハエルの胸にぎゅうとしがみつくと、ようやくいくらかホッとする。

「悪い、アルト。矢三郎様に言われて、あちこちの使いをしていたんだ」
「おやミハエル、それではまるで私が悪者のようではないですか」
「似たようなものです。俺はアルトの側にいると誓ったのだと言ったのに、矢三郎様は肝心な時に連れて行って下さらない。城でのことだって、俺がいればあんな野郎一発で」
「短慮はお止めなさい。今三島殿に手を出したところで、こちらの立ち場が悪くなるだけです。アルトさんの立ち場が危うくなるだけのことですよ。そのくらい、お前にだって分かるでしょうに」

ミハエルの腕にしがみつき、矢三郎のお小言を聞く。
頼るべき2人、昔と何も変わらない2人に挟まれている間だけは、アルトも安堵することが出来た。
しかしそれがつかの間にすぎないことも、今のアルトにはよく分かっている。
今のこの平穏が、残された最後の幸福なのだということも。

(・・・このまま、時が止まればいいのに)

うららかな春の陽気、美しい花々。
思い出に溢れた屋敷に暮らし、すぐ側にはかけがえのない2人がいてくれる。
アルトはそれを幸福に思う一方で、きっともう二度とこんな日々はやって来ないのだと絶望にも襲われる。
油断すればぽっきりと折れてしまいそうな、そんな不安定な心を持て余し、アルトは思わず呟いた。

「・・・いっそ、今ここで死んでしまいたいな」

独り言のはずが、存外はっきりと口に出したらしい。
アルトのその呟きに、矢三郎とミハエルは揃って険しい顔をする。

「滅多なことを言うな、アルト。お前が死ねば俺も死ぬぞ」
「・・・馬鹿言うな。別に、俺がいなくたって・・・」
「馬鹿はお前だ。俺はアルトのいない世界になんて興味はないんだって、いい加減分かれよな」
「そ、んな・・・こと・・・」

ない、とは言い切れなかった。
それくらいのことはやりかねないのがミハエルだ。
それくらいにはミハエルは己を思ってくれているのだろうと、アルトはそう信じていた。
アルトにとってミハエルが唯一であるように、ミハエルにとってのアルトも無二の存在だ。
そう思えるだけの月日を、2人は過ごしてきたのだ。
じっと見つめる碧眼を、アルトも黙って見つめ返した。
そんな2人を前にして、矢三郎は静かに口を開く。

「・・・仕方ない、そろそろ頃合いかもしれませんね。ちょうど今、最後の一手も打ち終えたところですし」

すでに関所の警備は厳重だという。
特にこの屋敷近くの里山を越えた関所の守りは固く、それが屋敷の警備も兼ねていることは明白だ。
警護などと言えば聞こえはいいが、実際にはただの見張りだ。
アルトが逃げ出さないよう、屋敷に不審な動きがあればすぐに駆けつけられるように、レオンか、あるいは奥方が手を回したことは疑いようもない。
だが辛うじてミハエルだけは、そんな監視の隙をついてこの屋敷に出入りをしていた。
矢三郎に命じられるがまま、託された文を国中へ送り届けては、返事を懐に戻ってくる。その繰り返しだ。
そしてすでに、矢三郎の手元にはいくつもの返事が溜まりつつあった。
ちょうど今も、ミハエルが相手方からの返事を矢三郎に手渡したところだ。
いったいどんなことがその文に記されているのか、矢三郎は決して漏らそうとはしなかったのだが。

「さて。そろそろ死んでみましょうか、アルトさん」

その言葉に、アルトとミハエルは揃って言葉を失った。

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