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2013/05/01 (Wed) オトナノレンキュウ

GW便乗ネタです。

今更ですが念のため、このミハアルは本編後出来上がった設定です。
平和になったフロンティア(バジュラの母星)で同棲中の万年新婚バカップルということで、ひとつ。
あんまり細かいところは考えていません。
母星に着陸したフロンティアの人たちは一気に星に土着して暮らしてもいいし、あるいは船団をシェルターみたいにして暮らしてても・・・どっちでもいいかなーという雰囲気です。
その辺は突っ込まない方向で、どうぞよろしくお願いします。
ちょっとばかり、いつもと違うノリになりました。

さて、私は明日まで仕事で明後日から旅立ちます。帰省ですが。
それでは連休の皆様もお仕事の皆様も、よきGWを!




今日は休み。
明日も休み、明後日も休み。
これが世にいう連休、泣く子も黙る大型連休だ。
普段忙しい日々を送るアルトもミハエルも、この時ばかりは世間並の休暇に恵まれることが出来た。

「連休が丸々重なるなんて、滅多にないぞ。どうしよう、たまにはどこかに旅行か・・・いやでも、いっそ毎日ベッドで過ごすってのもいいな。朝から晩まで二人っきり、姫の腰が立たなくなるまで・・・ふふふふふ」

にやにやと締まりのない笑みを浮かべるミハエルの脳内は、すっかりピンク色の妄想一色だ。
能天気に明るい金髪の頭の中では、言うまでもなく、あらわな姿のお姫様が・・・それはもちろん一糸まとわぬ姿だったり、あるいはあえてのエプロン一枚きりだったり、バリエーションは無限大だ・・・ベッドの中で、まるで誘うような上目遣いを浮かべていたのだったが。

「はい、もしも・・・なんだ、兄さんか。どうしたんだ、え、大掃除?あの蔵に手をつけるのか?それは大変だ、親父も入院中なのに・・・そうか、それなら」

早乙女の実家から電話があったのは、連休の前々日のこと。
その相手が矢三郎だと分かった瞬間にミハエルは嫌な予感がしたのだったが、悲しいことに、嫌な予感ほどよく当たるものだ。
即座に顔を強張らせたミハエルの思惑など知るよしもなく、アルトは生真面目な顔で矢三郎に相槌をうっている。
その会話の内容は、漏れ聞こえるだけで十分に展開が読めてしまう。
元来真面目な、おまけに跡取り息子が家出をしたという引け目のあるアルトが、こうした事態を放っておける性格ではないことくらい、ミハエルにだって・・・それはもちろん、矢三郎にだって・・・よくよく分かっていることなのだから。

「ミシェル、俺明日から屋敷の大掃除を手伝いに行く」

働き者のお姫様は堂々宣言し、あわれミハエルのピンク色の連休妄想は言い出す前からの予定変更を余儀なくされてしまったのだった。


*****


「なにもお前まで付き合うことはないんだぞ。せっかくの休みなんだし、家で寝てたらどうだ」
「冗談だろ、俺が姫を一人で実家に帰させるとでも?それに大掃除ってんなら、人手はあって困るもんじゃないだろう」

連休初日、アルトとミハエルは揃って早乙女のお屋敷の正門前に並んで立っていた。
フロンティアでは珍しい、というよりも全銀河的に見てもここまで純和風で徹底された個人宅は珍しいだろう。
バジュラとの戦いによってかなりの損害を負ったフロンティア船団だったが、早乙女家は奇跡的にその被害が軽症に済み、バジュラの母星着陸後も以前からの風情を損なわないように改修工事がなされていた。
一世帯が住むには広すぎる敷地、入場料だって取れそうな日本庭園、時代劇のロケ地にだってなれそうな家屋敷も何もかも、以前と変わらぬ様子なのだ。
一般庶民なら誰もが気後れしてしまいそうなこの屋敷の前に立つたびに、ミハエルは、

(アルト姫は、ほんとにお姫様なんだよな)

と思ってしまう。
冗談でも嫌味でもなく、彼は育ちの違う人間なのだ。
もっともそう思った次の瞬間には、

(そんなお姫様が、今は俺のものなんだもんなあ)

と、頭に花を咲かせるミハエルなのではあった。
世の中、幸せな人間の勝ちなのである。
とはいえ、そんな屋敷の一人息子であるアルトはあくまでアルトなのであって。

「いつ見てもでかい家だな。それじゃ姫、まず何をしたらいいんだ?言ってくれたら、何でもするぜ」
「そうだな。それじゃあお前は蔵に回ってくれ。もう人がいるはずだから、言われる通りに中のものを出してくれればいい。俺は兄さんと屋敷の方をやるから」
「え、ええー・・・?結局、別行動になるわけ・・・?」
「力仕事のためにお前がいるんだろ?来たからには、しっかり働いてもらうからな」

すっかり『お掃除モード』に入ったアルトには、ミハエルの思惑も何もない。
せめてキャッキャウフフと新婚ごっこでもしながら掃除をしたいという桃色妄想はまたしてもうち砕かれ、ミハエルはすごすごとアルトが指し示す蔵の方向へと歩き出すのだった。


*****


昔は、蔵は恐ろしいところだった。
何事も古式ゆかしい早乙女家では、悪さをしたら蔵に閉じ込められるという前時代的な躾が是とされていたのだ。
「全部読むまで出てくるな」と、嵐蔵からいくつもの演技書とともに押し込められたこともある。
子供時代を思い起こし、アルトは思わず苦く笑う。
今思い出しても、あれは辛い修行だった。
あの体験を懐かしい思い出として語るには、まだ時間がかかるようだ。

「アルトさん、呆けていないで。次は蔵に行きましょう、昔の道具が色々ありますから」
「あ、ああ・・・そうだな」

古い書物を陰干しし、縁側はまるでレトロな古本屋の風情だ。
趣味人なら涎をたらしそうな古書の数々が、この家では山と眠っている。
膨大な蔵書をずらりと並べるだけでも、案外結構な手間だった。
昔のことを思い出したのは、このかびくさい臭いのせいか。
湿っぽいそれは懐かしい匂いでもあり、アルトの郷愁をかきたてる。
もっともそれは矢三郎も同様なのだろう、アルト以上に長くこの家に住む男は陰干しの一角を眺め、細い目をますます細めて笑った。

「懐かしいですね。それを読んでいた頃、アルトさんは10歳くらいでしたか」
「・・・いいだろ、昔のことは。さっさと庭に行こうぜ」

風姿花伝を指差す矢三郎に、アルトは思わず照れ隠しだ。
振り切るように歩き出すと、庭からもなんだか賑やかな音が聞こえる。
矢三郎やミハエルだけではない、早乙女門下の人間たちが手伝いに借り出されているのだ。
蔵に仕舞いこまれているのは、早乙女家代々の・・・ガラクタなのか値打ちがあるのか、アルトには全く判断できない・・・収蔵の品がほとんどだ。
それらが整理整頓されていないわけではないのだが、なにしろ物が多すぎるため、どの箱に何が入っているのか、若い者ではさっぱり分からない。
(それでもアルトよりは矢三郎の方が、矢三郎よりは嵐蔵の方が把握しているのだろうが)
舞台関係の物は業者に保管を委託しているのが幸いではあるが、早乙女家は舞台人であるとともに文化人としての顔も持つ。
何気なく所有している掛け軸、茶道具、あるいは着物の一着が、歴史的文化的ともに非常な価値があるものかもしれないのだ。
実際アルトの子供時代にも調査の学者が蔵を訪ねることもあり、そう思えば、ますます扱いには気を使う。
いっそ、全部博物館にでも寄付してしまえば話は早いのではあるが。

「お、働いてるな」

普段は重く閉められた蔵の扉が開け放されて、その前にずらりと中のものが運び出されていた。
晴れ渡る青空の下、みずみずしい緑の庭に古めかしい道具が並ぶ様子はなかなかに壮観である。
そして蔵の内から、いかにも重そうな長持ちを一人で抱えて歩いているのは、あまりにも目立つ金髪の男。
ミハエルだ。

「やっぱ連れて来てよかったな、あいつ」

そう呟くアルトの横顔は、心なしかうれしげだ。
矢三郎はちらりとそんなアルトの方を見やり、わざとらしい口調で囁く。

「ずいぶんと嬉しそうですねえ、アルトさん」
「べ、別に・・・力のある奴は、多いにこしたことないだろ」
「ええ、まあ。そういうことにしておきましょうか」

ミハエルとの中は、もちろん矢三郎にはとっくにお見通しだ。
とはいえ身内にそれを指摘されるのはアルトには未だに気恥ずかしく、いまいち素直になれない。
今もぷいと顔をそむけ、わざと矢三郎と逆方向に歩くくらいだ。
アルトが足元に気をつけながら歩いていると、見覚えのある大きな箱に行き当たった。
これもミハエルが運び出したものなのだろうか、一人で抱えるには随分大きい。
見覚えがあると思うのは、子供のころに蔵の中で見たことがあるからなのだろうか。
それにしても、これだけ大きな箱の中、いったい何が入っているのか。
ふと興味を覚えたアルトは、思い切ってその蓋に手をかける。
蓋だけでも重いそれを、ズズ、と少しずらしてみたところが。

「・・・これ、は・・・」

見えたのは、色鮮やかな着物だった。
淡い桃色、藤色、空色の着物は、見るだけで上等の品だと分かる。
どれも綺麗に畳紙に包まれて、丁寧に保管されていたようだ。
そしてその柔らかな色彩は、考えるまでもなくアルトにその持ち主の面影をよみがえらせてくれる。
懐かしい着物の奥にあったもの、帯や組紐、そして手鏡や髪飾りなどの小物にいたるまで、どれもこれもにその人の息吹が込められているようで。

「懐かしい。美与様の着物ですね」

いつの間にか、アルトのすぐ側に矢三郎が近づいていた。
振り向いても、アルトは咄嗟に声も出せない。
予想外に対面した母の遺品の数々を前に、ただぐっと蓋をつかんだ指に力をこめる。

「・・・なんで、ここに?母さんのものは、もう全部なくなったんだと思っていた」
「先生がしまわれたのでしょう。見るのも忍びないから、と」
「そんなわけない、だってこれは、昔・・・」

じっと箱の中を見つめ、アルトな昔のことを思い出す。
母が亡くなったばかりの頃、アルトは泣いてばかりいた。
そんなアルトを、嵐蔵は叱り飛ばしたのだ。
母の死は稽古をさぼる言い訳にならない、そんな腑抜けで舞台に立てるか、と・・・思えば、その頃からアルトと嵐蔵の仲は一層悪化したのだ。
そして美与の着物を見ては涙を浮かべるアルトに、嵐蔵はこうも言い放った。

『そう泣いてばかりいるなら、全部燃やしてしまうぞ』

そして次の日には、美与の着物も小物も何もかもが屋敷から消えてしまった。
本当に燃やされてしまったのだと、アルトはひどく傷ついた。
泣くだけ泣いて、そしてそれからはもう一粒の涙も流さなかった。
きっとそれが、アルトの子供時代との決別だったのだ。

「・・・母さんの物は、親父が全部燃やしたんだと・・・」
「燃やした、ですって?そんな風に思っていたんですか?」
「だ、だって親父が自分でそう言ったんだ。昔、俺があんまり泣いていたから」
「船団内で火を出すなんて、犯罪ですよ。いくら先生とはいえ、個人の勝手で出来るものではありません」

そもそも、と矢三郎はさらに続けた。

「先生が美与様のものを処分するはずがありません。それくらい分かるでしょう、アルトさん」

言い聞かせるように告げられて、アルトは思わず口を噤んだ。
美与のものがここにあることは、矢三郎も知らなかったらしい。
ということは、嵐蔵が全部運んだのだろう。
芝居以外のことにはまるで興味を示さない、あの父が。

(・・・どんな顔して、運んだんだろうな)

想像すると、なんだかおかしい。
アルトに見つからないように、夜中にでも運んだのだろうか。
真っ暗な中でこそこそと屋敷と蔵とを往復する父の姿を想像し、アルトはなんだか奇妙な気分だった。

(そうか、燃やしたわけじゃなかったのか)

むしろ、大事に取っておいたのだ。
大事に、丁寧に、蔵の奥にしまうくらいに・・・きっと嵐蔵も、アルトと同じくらいに美与のことを思っていたのだ。

(なんだよ、親父の奴。人には「忘れろ」なんて言ったくせに)

じわりと胸の奥が熱くなる感覚に、アルトは思わず少し慌てる。
鼻の奥までツンとする感覚に、これはやばいと思ったのだったが。

「美与様は着物の趣味がよろしかった。どれもアルトさんに似合いそうじゃありませんか、着て差し上げたらきっと美与様もお喜びですよ」

矢三郎のそんな軽口に怒ったふりで、込み上げるものを誤魔化した。


*****


「つっっっかれた!3日分は働いたな!」

帰り道、億劫そうに肩をまわすミハエルに、アルトは深く頷いた。

「ああ、疲れた。実際、3日分くらいは働いたんじゃないか?1日であんなに片付くなんて、兄さんもびっくりしてたし・・・助かったぜ、ミシェル」
「他ならぬ姫の実家だからな。それに、売れる恩は売っておかないと」
「なんだよ、恩って。悪巧みかよ」

言いながら、アルトはミハエルに感謝していた。
せっかくの連休の1日をこんな風に潰して、悪かったと思っているのだ。
きっとミハエルはミハエルなりに、連休の予定を立てていただろうに・・・と思えるくらいには、アルトもミハエルの性格を把握しつつあるのだ。
最近やっと、というところだが。

「冗談、冗談。それに結構面白かったし、楽しかったぜ。なんならまた行ってもいいくらいだ」
「なんだ、そうだったのか?それならそうと言えよ、せっかく兄さんに断ったのに」
「・・・へ?姫、今何て?」

ぱちりと瞬くミハエルに、アルトの方もぱちぱちと瞬いた。

「いや、大変だったろ、今日。連休をこんなことで潰すのも悪いし・・・明日はもう行かないって断ってきたんだ。兄さんも、これだけ片付けばあとは門弟たちでやれるって言ってたし」
「・・・それじゃ、明日からはもういいのか?完全フリー?」
「ああ、そうだ。だけどお前がそんなに掃除したいのなら、もちろん明日も行ってもいいぞ」
「冗談だろ!やっと姫と2人っきりになれるってのに!」

叫び、ミハエルはぎゅうとアルトの手を握る。
まだマンションに辿りついていない往来のど真ん中でとアルトは大いに焦るが、ミハエルはそんなことは気にしない。
疲労困憊の顔もどこへやら、碧の目をらんらんと輝かせて。

「今日一日の恩はでかいぞ。明日からは俺の予定でいかせてもらうからな、アルト姫」
「な、なんだよ・・・分かったよ、分かったから」

いったい、ミハエルが何を言い出すのか。
なんとなく分かる気もするのだが・・・仕方ない。
連休の1日を大掃除で潰した引け目もあるし、それに、今日のアルトは気分がいいのだ。
きっと今日屋敷に行かなかったら、美与の遺品を目にすることもなかったはずだ。
そして、父への誤解も引きずったままでいたことだろう。
そう思えば、今日1日付き合わせたミハエルにも寛容になるというもので。

「仕方ねえな、今度は俺がお前に付き合う番だ。何でも、お前の言う通りにしてやる」

思わず言ったその一言を、アルトが後悔するのはそう遠くない先の話。
ミハエルの初期の連休妄想、とても口では説明しきれないピンク色した男の妄想がどこまで現実のものとなるのか。
それを知るのは、待ちきれずにアルトの手を引いて一路自宅へと走り出した金髪男だけなのだった。


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