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2013/03/21 (Thu) 放課後寄り道コンビニ通り

寒い日にコンビニで肉まん買う嬉しさ、プライスレス。
時期的に季節はずれかなとも思ったのですが、書いてる時はまだ寒かったんですよ。
あ、でも今日も寒かったですね。
そしてタイトルがちっとも思いつきませんでした。

ちなみに自分的には姫の転科後間もなく、SMS入隊前の設定です。
コンビニで唐揚げむさぼってる眼鏡の横で極太フランク頬張って動揺させる姫、なんて定番も大好きです。




「おいミハエル、ちょっと付き合え」

誘い文句に、ミハエルは思わず帰り支度の手を止めた。
この時期、試験前で放課後の自主練フライトは中止の期間中だ。
となればさっさとSMSの宿舎に帰るに限ると支度をするミハエルに声をかけたのは、珍しいことに、航宙科が誇る麗しのお姫様だった。

「珍しいな。普段はつれないアルト姫が、どういう風の吹き回しだ」
「るっせえな。嫌ならもういい、誰か他の奴を・・・」
「いやいやいや、誰も嫌だなんて言ってないだろ」

ぷいとそっぽを向いたアルトを、ミハエルは慌てて呼び止めた。
世にも気ままな姫様が、せっかく声をかけてくれたのだ。
早乙女アルト、このパイロットコース随一の変わり種が、いったいどんな気まぐれか。
転入以来初めてのアルトからの誘いに、ミハエルはあたふたと立ち上がった。
こんな幸運滅多にないぞと、その端正な横顔は、隠しようもなく頬が緩んで。

「荷物持ちか、道案内か?お姫様の従者役なんて光栄だな、どこにでも付いていくぜ」
「ほんとうぜえ、お前・・・やっぱ止めときゃよかった・・・」

渋い顔のお姫様に、浮かれた様子の撃墜王。
2人のそんな光景は、今や校内では珍しくもない。
下校のチャイムが帰宅を促す教室の中、すれ違う同級生たちは皆一様におかしげな微笑をうかべて2人を見送る。

「ミシェル君、アルト姫、バイバイ!」
「今日は2人で帰るの?仲良いね」

目の保養だとはしゃぐ女子生徒たちに手を振って、ミハエルはアルトを追いかけた。
真っ直ぐな後ろ姿に肩を並べ、歩幅を合わせて歩き出す。
となれば、ミハエルにあちこちから羨望の眼差しが注がれるのは当然なわけで。

「こいつはいい気分だ。癖になりそうだな」
「・・・何言ってんだ、お前?」

気まぐれ姫は、鈍感姫でもあるらしい。
訝しそうなアルトを見下ろして、ミハエルは思わずにやりと笑った。


そして、お姫様はいったいどこに行きたいのだと思ったところが。


**********


「・・・まさかコンビニの肉まんとはな。さすがの俺も予想外だった」
「んだよ。だから嫌なら帰れって言ったろう」

アルトが真っ直ぐ向かった先は、何の変哲もないコンビニだった。
美星学園すぐ側のコンビニでアルトは肉まんを1つ買い、そして次は横断歩道を渡ったコンビニ(1軒目とは別会社だ)で同じく肉まんを、それから横道に入ったコンビニ(同じく別会社)と、路面電車の停車所最寄のコンビニ(同じく)でも肉まんを1つずつ買った。
計4つもの肉まんを買ったアルトは、おもむろにそれらを2つに割った。
そしてその半分ずつを「ん」とミハエルに手渡して、ひどく満足そうな顔をしている。
その理由は、もちろん言うまでもない。
コンビニの肉まんなど、ミハエルにとってはどれもこれも似たようなものだ。
だが万事繊細なお姫様にとっては、味や食感が大違いらしい。
実は今までも一人で買い食いを試みたことはあったそうなのだが。

「コンビニごとの肉まんを4つもか、お姫様は案外欲張りだな」
「・・・一度食べ比べたかったんだよ。でも1人で4つはキツいから」
「なるほど。アルト姫は少食であらせられるからな」
「うるさい、おごりなんだから文句を言うな」

茶化すミハエルに、アルトはぷいと顔を背ける。
それがひどく子供じみておかしいやら可愛いやら、ミハエルは頬が緩みそうになるのを必死に堪えた。
しかしもちろん、ミハエルに文句などあるはずもない。

(気難しいお姫様が、ずいぶん丸くなったもんだ)

芸能科からパイロットコースにやってきたばかりの頃、アルトは今よりずっと頑なだった。
誰もがアルトと話したがっていたというのに、孤高のお姫様は、ひたすら彼らとのコミュニケーションを拒否していたのだ。
だがそんなお姫様を、ミハエルはひたすら構って遊んでいじり倒して・・・ルカ曰わく、おせっかいだ過保護だと言われるほどにべったり構った。
そうするうちにアルトの頑なさはただの人見知り、警戒心なのだと知ってからは、他の同級生も巻き込んでますます構った。
そしてその結果、今こうして2人でいるのだ。
誰もが認める箱入り育ちのアルト姫が、まさかコンビニで買い食いだとは、いったい誰が想像するだろう。
おまけにそのお姫様が誘ったのは他ならぬ自分、自分1人きりなのだと思えば、ミハエルはますます気分がいい。
上機嫌のまま、ミハエルは肉まん4種のそれぞれ半分をあっという間に飲み下す。
そして未だ上品に肉まんをちぎって食べているアルトを見やり、にこりと笑ってこう言った。

「コンビニの肉まんもいいけど、もっと珍しい変わり種はどうだ?俺の知ってる中華屋に、マグロまんってのがあるんだけどな」

マグロまん、とアルトはオウム返しに呟いた。
初めて耳にするその単語に、世慣れないお姫様は好奇心を隠せないでいる。
その証拠に、切れ長の瞳はきらきらと・・・真っ直ぐに向かってくる琥珀の眼差しに、ミハエルは目眩がするのを辛うじて踏みとどまった。
舞台にも映える目力は、間近で見るには眩しすぎるのだ。

「マグロまん?なんだそれ、美味いのか?」
「それは食べてからのお楽しみだ。どうだ、今度連れて行ってやろうか」
「・・・ふ、ふん。そこまで言うのなら、行ってやらないこともないが」

素直でないその返事に、ミハエルは思わず笑ってしまう。
分かりやすいくせにひねくれた、しかしそれがどうにも子供じみて可愛いばかりのこの箱入り姫君に、ミハエルは何故だかとてもかなう気がしない。
空とベッドの撃墜王が、アルトに限っては完全降伏、お手上げ状態で。

「よし、それじゃあ決まりだ。他の奴には内緒だぞ、アルト姫」
「内緒?何故だ?」

きょとんと瞬く幼い顔に、ミハエルは思わず笑ってしまう。
姫君の放課後を独占するのは、自分だけでいいのだ。
そんな子供じみた独占欲に、ミハエルは、取り返しのつかない予感を覚えもするのだが・・・だがそれも、このお姫様が相手ならば仕方のないことだ。
当の本人は至って涼しい顔で、肉まんを口に含んでいるのだけれど。

(俺を墜とした責任は取れよな、お姫様)

胸の中だけで呟いて、ミハエルはアルトに手を伸ばす。
唇の端についた白い生地の欠片を指先でそっと拭ってやれば、たったそれだけのことに、アルトは途端に気恥ずかしそうな顔だ。
白い頬をほのかに染めて、視線をそらして睫毛を伏せる。
ほんの一瞬の、その花開くような表情に、ミハエルの頬までわずかに染まって。

(・・・やばい。また、墜ちた)

こうして今日も連戦連敗。
お姫様の見事な一撃にまたしても心臓を射抜かれて、ミハエルは墜落記録を更新してしまうのだった。

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