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2013/03/06 (Wed) 花盗人(14)

今更ですが、作中の奥方はオリキャラで設定しています。
いろいろ考えてみたのですが、どうしても相応しい女性キャラがおらず・・・
グレイスを適役敵役にしてしまうのも、なんだか違う気がして。
というわけで、奥方様は奥方様!という脳内補完でお願いします。
オリキャラはあまり出したくないんですけど、修行の足りないところです。

ということで、14話です。
続きからどうぞ。




初めて会った奥方は、拍子抜けするほど凡庸だった。
取り立てて美しくもないが、醜いというほどのこともない。
薄い顔立ちと年相応に肉のついた丸い体つきはあまりにもごく普通の婦人然として、一見優しげですらあった。
話に聞いていた恐ろしい女怪像からはかけ離れたその姿に、アルトはまさか影武者ではないかと疑ったほど。
だが、そんな彼女が唯一はっきりと存在を表すのがその瞳だ。
アルトを見る、その視線。
結い上げた髪から爪先まで、アルトの一挙手一投足を眺めるその視線だけは、確かに人に生死の危機を抱かせるほどの負の力を放っていた。
だがいかな女主とはいえ、今この場でアルトに無体な真似をすることは出来ない。
刺すような視線を受けとめて、アルトは背筋を伸ばして端座していた。

(・・・どいつもこいつも、人のことをじろじろと)

早乙女の城の大広間、広々と開け放された謁見の間には呼び出された重臣たちがずらりと並び、ことの次第を見守っている。
嵐蔵に仕えた重臣たちは初めて登城したアルトに目を見張り、奥方とは違う意味で興味深そうな視線を送る。
アルトに美与の美貌を重ね、驚く視線。
不幸な運命に翻弄される姫君への憐れみの視線。
あるいは、単に絶世の美姫に対する粘ついた視線も少なくはない。
アルトはそんな視線を一蹴し、ただ凛と目の前の奥方と向き合っていた。
慇懃な挨拶をして、当たり障りのない会話を交わす。
矢三郎に言われた通り、アルトはひたすらおとなしく、伏し目がちに相づちをうつばかりだったのだが。

「お初にお目にかかります、アルト姫」

そこに、1人の男が表れた。
アルトが驚き顔を上げれば、目が合ったのは蛇のような目つきの男だ。
奥方の側に腰を下ろし、酷薄そうな唇に愛想笑いを浮かべている。
アルトから視線を離さないまま、その男は三島と名乗った。

「この度、早乙女の養子に入ることになりました。私ごときが嵐蔵様の後継など、恐れ多いことですが・・・このようにお美しい姫君と兄妹の縁を結べるなど、望外の喜び」

何も言えず、アルトはただ顔を伏せていた。
それでもなお全身に絡みつく視線を感じるアルトに、三島と名乗る男は後を続ける。

「・・・仲良く致しましょう、アルト姫」

その言葉に、ぞわりと鳥肌が立つ。
瞬間、アルトはそれまで努めて無視していた周り中の視線を一気に感じた。
奥方の冷たい視線、重臣たちの好奇の視線。
そして三島の蛇のような粘ついた視線を浴びせられて、アルトはいっそこの場から逃げ出したくてたまらない。

(もう嫌だ。早く帰りたい)

ただでさえ、アルトはこれほど多くの人間と一斉に会うことなどなかったのだ。
美与の屋敷に出入りするのはごく限られた人間ばかりで、彼らは皆アルトに優しかった。
こんなにも様々な感情の入り乱れた視線に晒されたことなどかつてなく、それはアルトをひどく疲れさせる。

(・・・帰りたい。ミシェルのところに)

早くあの暖かな腕に抱かれたい。
優しい瞳に慰められたい。
そんなことを言えるわけもなく、アルトはただ拳を握り、深く頭を下げた。

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