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2012/12/27 (Thu) シークレット・クリスマス(後編)

クリスマスネタ、結局全然間に合いませんでした・・・。
取り急ぎ、書きたてそのままUPします。
中身がないわりにだらだら長くなりましたが、一応これで今年の更新はラストになります。
今年も一年、お付き合いいただきありがとうございました。
来年もともにミハアルを愛でていただけましたら、これ以上の喜びはありません。

そして私はこれから年賀状を書きます!
まだこれっぽっちも手をつけていないのです・・・恐ろしい・・・




結局、ミハエルはアルトに問いただせなかった。
何しろ決定的な何かを見たわけではない、聞いたわけでもない。
ただアルトとランカが2人で歩いているのを見たと、それだけのことでしかないのだ。
しかし、たったそれだけのことが気になっているのも確かな事実で。

(ちょっと女友達と出歩くくらい、よくあることじゃないか。心狭すぎだろう、俺)

そう思うのも嘘ではない。
だが同時に、あの時あの場所を2人で歩いていたアルトに不信感を抱いたのも本当なのだ。

(間違いない。アルトは何かを隠している)

そう確信する一方で、アルトを前にすると何も言えなくなってしまう。
自分にこれほど臆病な一面があったとは、ミハエル自身、思いもよらないことだった。
かつての恋人たちがいくら浮気をしたところで(そもそもミハエル自身が誠実な恋人ではなかった)、こうまで気になったことなどなかったというのに。

(・・・本当に、アルトに関しては俺らしくない)

常になくもどかしい思いを抱えたまま、ミハエルはとうとうクリスマスイブの当日を迎えたのだった。


**********


「それじゃ、ちょっと出掛けてくる。夕方までには帰るから」

クリスマスイブ当日、アルトは朝からそう言って家を後にした。
子供のころからよく躾られたのだろう、出掛ける時にはいつもどこそこに行ってくると言うアルトが、口ごもるように行き先をぼかして言わなかった。
そしてミハエルもまた、それを追求はしなかった。
追求は、しなかったのだが。

(・・・何やってんだ、俺は)

情けないとは思いつつ、気になるのは止められない。
葛藤した挙げ句、ミハエルはアルトの後を追いかけていた。
電信柱の影にひそみ、コンビニの角に隠れ、アルトに気付かれないように尾行する。
端から見たらまるきり不審者だということなど、この際かまっていられない。
最寄り駅から地下鉄に乗り、そして下車した駅は意外にもSMS新聞社に近く、ミハエルはいよいよ嫌な予感に襲われた。
こんな休日に、人の少ないオフィス街に何の用があるのか。
・・・まず間違いなく、あの日ミハエルが目撃したアルトとランカの動向と同じ理由のはずだ。

(もしかして、ランカちゃんの自宅がこの近辺なのか?このあたりも最近はマンションが増えてきたし、ありえない話じゃないな。アルトの奴、まさか今更女の子の方がいいなんて・・・)

あの日見たアルトとランカのツーショットを思い出し、ミハエルは思わず眉をしかめた。
カップルというには色気のない2人だったが、言い換えれば初々しいと言えなくもない。
むしろミハエルとアルトよりよほど似合いの組み合わせだ。
しょっちゅう女の子と間違えられるアルトだが、小柄で華奢なランカと並べば、いくらか頼もしく見えなくもない。
あの日あの時に2人を目撃するまで、ミハエルは全く想像もしていなかったが・・・まさか本当に、アルトが心変わりをしたのだろうか。

(そうでなくても、女の子に興味を持ち出したとか・・・考えてみれば、アルトもそういう年頃だもんな)

まさかと思う一方で、嫌な予感はつのる一方だ。
ミハエルが1人でぐるぐるしている間に、アルトは狭い横路に入っていった。
その歩みには迷いがなく、アルトがこの道順に慣れているらしいことが知れる。
しかしそれは、この付近に勤めて長いミハエルでさえも初めて通るような道だ。
大通りを避けるように横路や路地ばかりを行くアルトの後を追いかけながら、ミハエルの頭は疑問符だらけだ。
ビルが立ち並ぶ大通りのすぐ側にこんな昔ながらの住宅や商店が集まるエリアがあったとは、知りもしなかった。
きっと今までは、目にも留めていなかったのだろう。
もの珍しく辺りを見回すミハエルの視線の先で、アルトがふいにとある建物の中へと消えた。
追いかけようとして、ミハエルは一瞬その場に立ち止まる。
その建物は、懐かしい風情のこの地域でもとりわけ古めかしくも威厳のある建物で。

「・・・アルトの奴、なんでこんなところに・・・?」

アルトが入った建物、それはレンガ造りの塀も美しい、クラシカルな『教会』だった。
建物入り口の看板と大きな十字架のレリーフとを、ミハエルはしげしげと眺める。
立派ではあるがこじんまりと落ち着いたこの教会は、単なるイベント気分で訪れるような雰囲気でもない。
クリスマスだからと派手なライトアップをするわけでもなく、あくまで慎ましい町の教会という佇まいなのだ。

(ここでランカちゃんと待ち合わせ・・・ってわけでもなさそうだが)

厚い扉に覆われて、門からは中が見通せない。
しかしこういう場所にずかずかと入るのもためらわれ、ミハエルは門の前で立ち尽くした。
ここで諦めるべきか、それとも思い切って入るべきか。
さてどうするかと、ミハエルはわりに長い間、そこで考えこんでいたのだったが。

「あれえ?お兄さん、確かアルト君の」
「き、君は・・・ランカ、ちゃん?」

ふいに声をかけられて、ミハエルは大いに焦った。
振り向いた瞬間に目に入ったのは、くりくりと丸い朱色の瞳。
何よりその特徴的な翡翠色のセミロングを見間違えるわけはない。
無邪気な笑顔が眩しい少女は、まぎれもなくミハエルがアルトとの間柄を邪推しまくっていた相手、ランカ・リーその人で。

(しまった、こんなところで本人に見つかっちまった!)

慌てるミハエルをよそに、ランカはますます明るく笑う。
年より幼く見えるほどの童顔に、こぼれんばかりの笑顔を浮かべて。

「ああ、やっぱり!アルト君を見にきたんですね?」
「・・・・・・へ?」

無邪気な少女は、まるで小さな台風だ。
ミハエルはぐいぐいと腕を引かれるままに、教会の中へと足を踏み入れた。
重い扉をバタンと開き、まだ誰もいない礼拝堂をズンズンと進む。
呆気にとられている間に、いつしか2人は礼拝堂のさらに奥、関係者入り口のような小さな扉の真ん前までたどり着いていて。

「アルト君、入るよ!彼氏さん連れてきたよー!」

ぎょっとするミハエルの目の前で、ランカはその扉を押し開く。
そしてミハエルの目に映ったもの、それは。

「・・・ミシェル、どうしてこんなところに?」

背中まである髪をおろし、その上に透け感のある白いベールをかぶっている。
白一色の衣装はどこまでも清らかで、ゆったりとした形がよけいにアルトを華奢に見せた。
飾り気のないシンプルな衣装なのに、それが一層アルトの美貌を際だたせて。

「まさか付けて来たのか?ったく、変な奴・・・」

近寄りがたいほど高潔なのに、唇を尖らせた顔は途端にあどけない。
仕方ないなと甘えたように見上げられ、ミハエルは、何も言えずに真っ赤になった。


**********


「ランカに頼まれたんだ。子供の数が減って、恒例のクリスマス劇が出来なくて困ってるって。俺も、予定があるわけでもなかったし」

アルトが語る顛末は、なんともアルトらしい話だった。
いわく、この教会はランカが幼い頃に通っていた場所らしい。
昔は賑やかだった子供会もだんだんと人が減り、今年はついに劇が成立するのも難しい人数にまでなってしまったのだという。
その話を聞いたランカが協力を申し出、アルトはそれに巻き込まれたという訳だ。
以前に目撃したツーショットは、たんに子供たちとの合同練習に向かうところだったと聞いて、ミハエルはただ脱力する。

(結局、芝居絡みじゃないか。心配して損したな)

安堵するやら、気が抜けるやら。
ミハエル・ブランともあろうものが、この元ペットには振り回されっぱなしだ。
だがそんな自分も悪くないと思うあたり、ミハエルも相当重症なわけで。

「それにしても、なんで黙ってたんだよ。劇なら劇って言ってくれればよかったのに」
「・・・だって、そしたらミシェルは見にくるだろう?」
「ああ、そうだな。時間があればな」

言いながら、ミハエルは思わず首を傾げた。
アルトの舞台なら、今までに何度も見たことがある。
劇団フロンティアの作品、例の三島レオン脚本の芝居は噂に違わず面白く、芝居には門外漢のミハエルでも惹きつけられるものだ。
その点はアルトも自信があるのだろう、何かにつけてミハエルを誘ってくるのが常だった。
だからこそ、ミハエルには不思議でならない。

「なあ、どうして今回は言ってくれなかったんだよ。その格好か?女装なんて、今更だろう」
「当然だ。仮にも俺は女形だぜ」
「そいつはよく分かってるさ。だけど、それなら何が原因だったんだ?」
「・・・それは・・・」

白装束姿のまま、アルトは少し首を傾げた。
頭を覆うベールも静かに揺れて、それはまるで、花嫁衣装のようにも見える。
一瞬見惚れかけたミハエルは、しかし当のアルトの発言に、思わず間抜けた声を上げた。

「・・・俺、クリスチャンじゃないから」
「・・・・・・はあ?」

ミハエルの呆れまじりの相づちに、アルトはさらに後を続けた。
これだよと、たっぷりのドレープの裾を持ち上げてはひらひらと指し示す。

「よりによって聖母マリアだぜ、マリア様だ。そんな人をクリスチャンじゃない俺が演じるってのは、不謹慎じゃないか?」
「いや、そう・・・そうか?」
「そうだろ?だから俺は裏方で手伝うって言ったのに、ランカが半ば無理矢理に」

こんなんじゃ教会にも見にきた人たちにも失礼だと言うアルトの顔は、あくまで真面目だ。
仮にも現役家出少年のくせに変なところでかたい奴だと、ミハエルは妙に感心する。
大した信仰心も持ち合わせないミハエルとしては、「似合っているならいいじゃないか」程度の感覚なのだが。

「まあ・・・不謹慎ってことはないだろ。たかが子供会の劇なんだし」
「舞台にたかがもクソもない。それにウチにはでかい仏壇まであるんだぞ」
「いやいや、だから問題はそこじゃないだろ」

そりゃあ早乙女の屋敷の仏壇はさぞ立派だろうと思いつつ、ミハエルはがっくりとうなだれる。
どうにもこうにもこの箱入りは、時折とんでもなく斜め上の発想をしてくれる。

「ランカちゃんに頼まれたんだろ?子供たちのためなんだろう。それがどうして失礼になるんだよ」
「・・・そ、そうか?」
「そりゃそうだろう。それに慈悲深いマリア様が、そんなことで怒るはずがない」
「そう言われれば・・・そうかな」

そうなのかもな、とアルトはようやく少し笑った。
見返すミハエルも同じように笑みを浮かべると、そのタイミングできゃあきゃあと賑やかな子供の声が響き始めた。
扉越しにも聞こえるそれは、言うまでもない今日の主役たちの到来だ。

「アルト君、用意出来てる?子供たち揃ったよ、リハやろう!」

そして子供たちに負けず劣らず元気いっぱいのランカの声が鳴り響き、アルトは笑って立ち上がる。
白い衣装の裾をふわりと揺らしたその姿は、まるで本当に清らな聖女のよう・・・というのは、単にミハエルの欲目なのかもしれないが。

「お呼びだ、行ってこい。俺も見物させてもらおう」
「なら本番まで見ていけよ。あの子たち、わりにいい芝居するんだぜ」

ミハエルの気持ちなど知らぬ顔で、アルトはそんなことを言う。
どれだけ子供が達者だろうがミハエルが見たいのはアルトだけなのだと、そんな当然のことを、当の本人だけはいつまで経っても分からないらしい。

(ったく、天然ってのはタチが悪いぜ)

なんとなく悔しくなって、ミハエルはアルトの手を取った。
軽く腕を引き寄せて、そのままふわりと口づける。
それは触れるだけの軽い口付けだったが、マリア様の唇を奪うというシチュエーションは、なかなかどうして悪くない。

「・・・うん、禁断ってかんじだ。癖になりそうだな」

もう一回、と唇を寄せたところをひっぱたかれるところまでは、ある意味予想通りの展開だ。
切れ長の瞳を尖らせて、白い頬は羞恥に染めて。
そんな顔で怒ってみても、逆毛を立てた子猫程度の可愛げだ。

「芝居前に変なことすんな、バカっ!おとなしく端で座って見てろ!」

格好に似合わない台詞を吐いて、アルトは勢いよく扉を閉めた。
扉の向こうではワイワイガヤガヤと、賑やかな子供の声がひっきりなしだ。
取り残されたミハエルはただ、その中に混じっているだろうアルトを想像するしかないわけで。

「・・・それなら、今度は芝居の後に変なことをしてやろう」

そうしたら次はいったいどんな顔をするのだろうと、ミハエルは一人派手ににやけてしまった。
そしてその後、懸案事項が消えたミハエルがどれだけ心置きなくアルトをかまい倒したのかということは言うまでもなく。

「ところでランカちゃん、どうしてアルトにマリア様役を?ランカちゃんがやるって手もあったんじゃ」
「だってそんなの、アルト君がやった方が盛り上がるもの。神父様も今までで一番きれいなマリア様だってご満悦だったし。そうそうミシェルさん、よかったらこの後のお楽しみ会一緒に行かない?私ね、アルト君用にサンタ服用意してるんだ!アルト君には内緒で!」
「サンタ服?それってまさか、」
「ミニスカ。私とお揃いなの、着て欲しくって」
「・・・分かってるねえ、ランカちゃん」
「うふふ、もちろん、ミシェルさん」

うふふ、あははと笑いあう2人の顔は、いかにも悪巧みに満ちている。
そんな2人を前にして、か弱いお姫様が抵抗など出来るわけがないことも。

「なんだよランカ、こっちに来いって?ミシェルまで・・・なんだよ、いつの間にお前ら仲良くなったんだ?え、何だこれ、なんで俺がこんな・・・!」

それももちろん、言うまでもないことなのだった。


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