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2012/12/21 (Fri) シークレット・クリスマス(前編)

せっかく連休前なので更新してみます。
連休に入るのですっかり週末気分なのですが、イブは月曜なんですね。日付と曜日の感覚がすっかり曖昧で・・・。
できればイブかクリスマス当日に後編UPしたいなぁと思っておりますが、無理だったらすいません。
と、先に謝っておきます。

ではでは、ちょっとお久しぶりのペットなミハアルです。
続きからどうぞー




世はまさにクリスマスムード一色だ。
あっちもこっちもイルミネーション、歳末セールにクリスマスフェアと賑やかしいことこの上ない。
そんな世間の盛り上がりに、ミハエルは今更ながらに気がついた。

「そうか。今年のクリスマスは、連休か」

実は、ミハエルは大してイベントごとには興味が薄い。
女の子が喜ぶイベントだから、まあ外せないよな、程度の認識だ。
小洒落たレストランにそこそこのプレゼント、それなりに気の利いたシチュエーションさえ用意すれば、大抵の女の子は落ちるものだ。
ミハエルにとってそれは、ほとんど決まりきった方程式のようなものだったのだが。

「・・・しかし、姫相手にそんな手抜きは通用しないな」

歴代の自称彼女が聞けば激怒するようなことを呟いて、ミハエルは珍しくクリスマスへの気合いを入れるのだったが。


**********


「なあアルト、週末だけどさ」

夕食後、ミハエルはさっそくアルトに持ちかけた。
何しろ今週末の連休だ、時間がないのだ。
雰囲気のいい店はとっくに予約でいっぱいだろうが、一縷の望みがなくもない。
ここは早々にアルトに好みを聞いて、良さそうな店にあたってみなければ。

(フレンチか、イタリアンか。中華でもいいが、アルトならやっぱり和食かな。そうだな、和食の店なら、まだ予約がとれるかもしれないし)

たまにはいい店で外食をして、ちょっとしたプレゼントでも贈ろう。
その後どうするか・・・どうなるかは、状況次第だ。

(ホテルまでとるのは、気が早すぎかな)

まだまだ純情な若い恋人(ようやくそう呼べるようになったのだ、ずいぶん回り道をしたが)をホテルに連れて行ったら、真っ赤になって恥ずかしがるだろう。
きっとそんな顔も可愛いはずだと、ミハエルはにやけた顔で考える。

(やっぱりホテルもとろうかな。空いてるところ、探してみるか)

すっかり浮かれた頭で、ミハエルはそんなことを思っていたのだが。

「・・・週末?なに?」
「何って、クリスマスだろ。どこまで浮き世離れしてんだ、お前は」
「クリスマス・・・ああ・・・」

その時、アルトは不思議な顔をした。
考えるような、口ごもるような顔を少しして。

「・・・ごめん、ミシェル」

その言葉に、ミハエルは耳を疑った。
しかし歯切れの悪いアルトの返事は、紛れもなくそれが事実なのだと伝えてきて。

「その日は・・・その、もう予定が・・・」

予想外すぎるその返答に、ミハエルは、返す言葉もなかった。


**********


翌日、ミハエルはうっすらと機嫌が悪かった。
とはいえ仮にも大人であるから、それを表に出したりはしない。
しかし昔からの友人までを騙し通せるほどの、そこまでの演技力はミハエルにはないわけで。

「やあね、不機嫌な顔。また子猫ちゃんに逃げられたわけ?」

昔からの友人、シェリルにはもちろんお見通しだ。
ミハエルの機嫌をこうまで簡単にアップダウンさせるのはあの『姫』少年しかいないと、シェリルはよく承知していた。

「なんだよ、シェリル。人の休憩を邪魔しにきたのか」
「ご挨拶ね、私は単にランチに来ただけよ」

そう言う2人が顔を合わせるのは、会社近くの喫茶店だ。
カフェというより喫茶店という方が似合うその店は、時代から取り残された雰囲気が古めかしくはあるが、SMS新聞社員にとっては馴染みの店だ。
長居しても文句を言われない、コーヒーは美味い、ランチは安いと3拍子揃ったところが気に入って、ミハエルは社員食堂に飽きたらここにやって来る。
今日も喫茶店の定番・カレーをすっかり平らげ、食後のコーヒーをすすってのんびりとしていたところに、偶然シェリルもやって来たというわけだ。
ここで顔見知りに会うのは、大して珍しいことでもないのだが。

「あのペット君、アルトって言ったかしら。2回も逃げられたんじゃ飼い主失格ね、他の飼い主を探しに逃げたんじゃないの?」

長い睫毛にさらにマスカラを塗り重ね、存在感たっぷりの目元を面白そうに細めている様は、まるでアリスに出てくるチェシャ猫だ。
猫は猫でも、アルトとはずいぶん毛色が違う。

「・・・逃げられてない。縁起でもないことを言うな、シェリル」
「あら、残念。あの子がまた野良になるんなら、私が拾ってあげたかったのに」

あながち冗談ではなさそうなシェリルの言葉に、ミハエルはじろりと睨みつける。
いったい何故だか知らないが、シェリルは妙にアルトを気に入っているようなのだ。

「何度も言うが、お前にアルトはやらないからな」
「はいはい、分かったわよ。それじゃあ何でそんなに機嫌が悪いわけ?どうせあの子絡みなんでしょう?」

決めつけるようなシェリルに、ミハエルは結局頷いた。
なんだかんだ言っても、ミハエルも誰かに聞いて欲しかったのだ。
そしてようやくおもむろに、昨晩の顛末を話し出したのだったが。

「・・・クリスマスに先約ぅ?」

さすがのシェリルも驚いて、長い睫毛をばっさばっさと瞬かせた。
だが次の瞬間にはまたしてもにんまりと微笑み、ミハエルをあれこれとそそのかす。

「やるじゃない、あの子ったら。まさかの二股宣言?」
「・・・アルトはそんなに器用じゃない。それにもしそうなんだったら、わざわざ俺に言うわけがないだろ」
「あら、案外冷静じゃないの」

つまらないわといかにも楽しげなシェリルに呆れ、ミハエルは深々とため息をつく。

「シェリルお前、面白がってるだけだろう」

がっくりと肩を落とすミハエルに、シェリルはとうとうケラケラと笑い出した。

「初めて見たわ、あんたのそんな顔。まあすっかりあのペットちゃんに骨抜きにされちゃって」
「うるっせえな。もう黙れよ」
「あの子、アルトって演劇少年なんでしょ?どうせ劇団とか舞台の予定じゃないの。あんたより優先するくらいなんだから」
「・・・だけどそれなら、正直に言えばすむ話じゃないか」

アルトのあの言い方、口ごもるようなあの言い方は、明らかに何かを誤魔化すようだった。
仮に舞台の予定なら、アルトがそれを隠すはずはない。
むしろ見にこいと誘うくらいのことはするだろう。
しかし、そうでないということは。

「・・・俺に言えないことが・・・あのアルトに・・・」

壁に向かってぶつぶつと呟くミハエルに、シェリルは処置なしと肩をすくめる。
そしてシェリルの注文したナポリタン(大盛)が運ばれてきた、ちょうどその時。

「あら?あの子・・・」

呟きかけて、シェリルはハッと口を噤んだ。
だがもう遅い、ミハエルはしっかりと見てしまった。
顔を上げた瞬間に、見間違えるわけもない、アルトその人の後ろ姿を。

「・・・何やってんだ、こんなところで」

喫茶店の窓越しに見えたのは、信号待ちをしている若いカップルだ。
高校生くらいに見える若々しい男女は、このあたりでは少々目立つ。
たとえそうでなくても、アルトの立ち姿はどこにいたって人目を引くのだ。

(何してるんだ。・・・どこに行くんだ?)

ミハエルのマンションからは遠い。
劇団フロンティアの稽古場からも遠い。
ミハエルの職場が近いだけのこんなオフィス街に、いったい何の用があって・・・しかも、女の子と一緒に。

(あの子、劇団にいた子じゃないか。ランカちゃんとか言ったかな)

アルトの隣にいるのは、鮮やかな緑の髪の少女だ。
小柄で可愛らしい少女のことを、ミハエルはよく覚えている。
なにしろ忘れもしない、ミハエルに強烈な一撃を喰らわせてくれた少女なのだ。

(劇団の子なら、やっぱり劇団の用事かな。そうだ、買い出しとかかもしれない)

だがそれにしては、他の仲間の姿は見えない。
そして買い出しにしては、この場所は少々不自然だ。
2人きりで、こんなところで・・・いったい、何を。

「・・・あらやだ、面白くなってきたじゃないの」

何やら不穏なアルトとミハエルとの距離感に、シェリルは思わず本音を漏らしてしまうのだった。


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