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2012/12/07 (Fri) 花盗人(9)

続きです。
ミハも姫もちょっとは大きくなったイメージで・・・12歳と10歳くらい?かな。
例の如く漠然とした妄想でお送りしております。




結果的には、早乙女の屋敷を出てよかった。
忍びの里に移ったおかげで、ミハエルは客観的に屋敷の現状を見ることが出来た。
他ならぬアルトと、その母が置かれた状況を。

「この国の主、嵐蔵様には美与様とは別に正室がおられる。隣国との和平とのために嫁いで来られた、政のための奥方様だ」

オズマが語ることは、屋敷にいては誰も教えてはくれない事実だった。
嵐蔵の正室の話など、あの屋敷では誰一人表立っては口に出さない。

「嵐蔵様は糞真面目なお方だからな、それでも奥方を大事にしていたそうだ。男女の仲という雰囲気ではなかったにしろ、関係は悪くなかったんだろう・・・嵐蔵様が美与様に会われる前までは、な」

それからオズマが語ったことは、ミハエルにも想像が出来るものだった。
美与の美貌と取り繕うことがないその心根との魅力は、ミハエルもよく知っている。
まだ若かった嵐蔵が美与を愛するようになるのは、きっとあっという間だったはずだ。

「美与様が側室になられることに、誰一人反対はなかった。なにしろ家臣皆が心配するほどの堅物だった殿様に、ようやく遅い春が来たんだ。それから一年もたたないうちにお子が出来たと聞いた時には、俺たちまで嬉しくなったものだったが」

だが、事が起こったのはそれからだった。
その頃はまだ城内で暮らしていた美与の周囲で、よからぬ事態が次々と起こりだしたのだ。

「まずは庭だ。美与様の部屋近くの庭にやたらにゴミが落ちるようになった。いくら掃除を徹底しても、翌朝には腐ったゴミが見つかったそうだ。庭師が丹誠込めて育てた牡丹や芍薬の首が根こそぎ折られたこともあったし、ひどい時には、池の鯉が残らず死んじまったことも」
「・・・それって、毒?」
「だろうな、だがいずれも犯人は分からず仕舞だ。美与様が探そうとされなかったからな」
「そんな、なんで美与様は・・・」

言いかけて、ミハエルは途中で言葉を切った。
そんな悪意に満ちたいやがらせの犯人を捕まえようとしない理由など、一つしかないのだと分かったからだ。
つまり犯人は捕まえてはならない相手・・・手を出したらかえって厄介な相手なのだと。

「美与様は若く美しかった。おまけにすぐにお子まで出来て、嵐蔵様に惚れられているのは丸分かりだ。形ばかりの奥方様の嫉妬がどれほどか、その怒りが美与様に向かうのも分からない話じゃなかったが」

しかし正室の実家は隣国の領主一族、早乙女にとっては事を荒立てたくない相手だ。
その事情を十分理解していた美与も、この程度のいやがらせなら甘んじて受けるしかないと、しばらくは我慢していた。
放っておけばそのうち飽きるだろうと、甘く見ていたのかもしれない。
だがある日、事件は起こった。

「食事に毒が仕込まれて、待女が一人倒れたんだ。美与様の毒味役だった、若い娘だ」
「・・・・・・!」

目を見張ったミハエルに、オズマは小さく頷いた。
言うまでもなく、それは美与を狙う毒だったはずだ。

「幸い命はとりとめたがな。しかしそこでようやく美与様も命の危険を感じ、城を出ることに決めたのさ。すぐに嵐蔵様が今のお屋敷を用意して、母子で住まうよう手配された」
「そんな。殿様は奥方様の仕業を知っているんだろ?少しはたしなめてくれたって」
「言っただろう、ミシェル。奥方様の実家は隣国、国主の一族だ。早乙女のような小さな国が事を構えていい相手じゃない。嵐蔵様が美与様を案じれば案じるほど美与様への嫌がらせはひどくなるし・・・嵐蔵様も辛かったはずだ」

主君への忠誠心からか、そう言い切るオズマに、しかしミハエルは頷けなかった。
ミハエルの主、守るべき人はあくまでアルトだ。嵐蔵ではない。
そして今のアルトと美与の世捨て人のような生活を知るからこそ、ミハエルは素直に嵐蔵の気持ちとやらを察する気にもならなかったのだが。

「しかし、せめてもの救いはお子が姫様だったことだな」
「・・・え?」

ぎくりと固まるミハエルに、オズマはにやりと笑ってみせた。

「お前の愛しの姫君様、アルト姫さ。あれで姫が男児だったなら、奥方様の悋気はますますひどかったはずだ。まず間違いなく、美与様より先にお世継ぎの命を狙ってきただろうな。お子のいない正室には、側室が産んだ男児ほど邪魔なものはない。女児ならどこかに嫁がせれば国のためにもなるが、男児となればそう簡単にはいかないだろう。他に子がない今、嵐蔵様の跡を継ぐのはそのお子しかいないってことになる。憎い側室の子が国主になるなど、奥方様には死んでも許せんだろうな。姫が姫でなかったら、今頃とっくに土の下だ」

そう言われ、ミハエルはようやく事態を理解した。
アルトが女として育てられている意味。
美与や矢三郎が、頑なにそれを隠し通そうとしている理由を。

「それじゃあ、アルトは・・・」
「なに、おとなしくしてる分には大した害もないだろうさ。実際美与様が今の屋敷に移られてからは、目に見える嫌がらせもほとんどないそうだしな」
「・・・このまま、アルトが大きくなっても?」
「何しろ美与様譲りの美貌だからな、嫁ぐ先には困らんだろう。だとすれば、奥方様もそう下手なことはしないはずだ。美姫が重要な政治の駒になるってことくらい、あのお方だって重々承知だろうからな」

お前には悪いけどなと付け加えたオズマの言葉は、ミハエルの耳には入らなかった。
アルトが女なら、政治の道具にされるのだという。
少なくともその価値があればこそ、嵐蔵の跡を継ぐ存在ではないからこそ、アルトは今無事に生きているのだ。

(・・・だけど、アルトは男だ)

見た目がいくら美しくとも、アルトの体は男なのだ。
いつかどこかに嫁がされる時が来たとして・・・ミハエルには考えたくもないことだったが・・・それがバレないはずがない。
・・・だとしたら、アルトは。

「どうしたミシェル、顔色が悪いぞ。お前にはつらい話だろうが・・・身分が違うんだ、せめて姫さんのために強くなれ。それがお前が出来る唯一のことだ」

オズマの言葉に頷いて、しかしミハエルには返す言葉もなかった。
・・・これから、どうしたらいい。
アルトは、そして自分はどうしたらいいんだ、と。
今はただそれだけが、ミハエルの心を占めていた。


**********


「ミシェルの奴がいないな。どこへ行ったか、お前ら誰か知らないか」
「ミシェルならお屋敷へ行ったよ、お頭。お姫様に会いたくなったんだと」
「なんだと?もう日暮れだぞ、今から山を下りる気か?お前たち、どうして止めない!」

日の落ちた山は、慣れた者でも迷いやすい。
ましてミハエルのような子供ならなおさらだとオズマが焦るのに、忍びの里の子供たちはのんきな声を上げた。

「大丈夫だよう、お頭。あいつ、この前なんて夜中にいきなり山を下りだしたんだぜ」
「そうそう、半日もあれば屋敷に行けるようになったんだって自慢してた。あの距離を半日なんて、信じられないよ」
「やたら目がいいみたいだぜ。うんと遠くまで見えるっていうし、だから夜の山も怖くないんだろうな」

ミハエルがいなくなるのはいつものことだと、子供らは声を揃えて言う。
山深い里を出て向かう先はいつも早乙女のお屋敷で、ほんの一時アルトの顔を見るためだけに息を切らして走るのだと。
しょっちゅうそんなことをしているうちに、いつの間にかミハエルはこの里に暮らす子供たちの中で一番に足が速くなったのだ、と。
次々に聞かされるミハエルの脱走話に、オズマは呆れて天を仰ぐ。

「・・・あのガキ、相当重症だな」

だがしかし、それが修行の励みになっているのならそれでいい。
まだ幼い子供の一途すぎるその想いに、オズマは思わず小さく笑った。


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